双極性障害とは

躁うつ病とも呼ばれる双極性障害は、気分が高揚する、いわゆるハイな状態になる躁状態とうつ病でみられるうつ状態を交互に繰り返すといった特徴がみられる病気です。

双極性障害は、激しい躁状態を伴う双極Ⅰ型障害(双極症Ⅰ型)と、軽い躁状態(軽躁状態)を伴う双極II型障害(双極症II型)に分類されます。躁状態とは、気分が異常に高まっている状態で、元気が異常にある(ハイテンションになっている)、アイデアが溢れるように次から次へと浮かぶ、寝なくても動き回る、けんかっ早い、注意散漫になる、常軌を逸した衝動買いをするなどの行動がみられ、生活に支障を来たすほどの症状を指します。軽躁状態(双極II型障害)の場合は、上記のような状態で周囲に迷惑をかけるということはなく、普段よりテンションが高い程度で生活に支障をきたすほどではないことが多いです。うつ状態については、うつ病と同様の症状がみられます。

発症すると躁状態とうつ状態が交互にみられ、時には躁とうつが混在する混合状態をきたすこともあります。ちなみに躁状態にあると患者様ご自身が病気であるという自覚がないので、なかなか治療に至らないことが多いです。原因は現時点では明らかではありませんが、遺伝的要因やセロトニンやノルアドレナリン等の脳内の神経伝達物質のバランスの乱れによって引き起こされるのではないかと言われています。

診断をつける場合、最初の頃はうつ病の症状が出ることが多いので、うつ病との見分けが難しいです。双極性障害とうつ病とでは、治療で用いる薬剤が異なるので、患者様に現れている症状や経過をしっかり確認しながら診断をつける必要があります。診断にあたっては、「これまで躁状態を発症したことがあるかどうか」という点が非常に大切なので、心当たりのある方はその旨を医師にお伝えください。躁状態は患者様自身とても気分爽快で、自分では病気だと気づきにくい症状でもあるので、身近なご家族や友人の意見が診断の上でとても重要です。うつ病と診断され治療を続けていたものの、実は双極性障害だった、と正しい診断に至るまでに何年もかかる、という報告もあるほどです。

なお双極Ⅰ型障害と双極II型障害を比較すると、II型は躁状態が激しくないため軽症に思われがちですが、治療によるコントロールが難しく、再発率が高いとされているのはむしろII型とも言われています。どちらにしても早めの治療が肝心です。

治療について

主に薬物療法を用いますが、うつ状態であっても抗うつ薬ではなく気分安定薬(リチウム、バルプロ酸、ラモトリギン等)を使用します。双極性障害のうつ状態に抗うつ薬を用いると、余計に気分を不安定化してしまうことがあるのです。また、抗精神病薬も同時に使用することも多いです。薬物療法により、気分変動の激しい波を、なだらかな気分の変動幅に落ち着いた「寛解状態」へ安定化し、その状態を保つことを目指します。

なお薬物療法による治療が困難な場合には、修正型電気けいれん療法(m-ECT: modified Electro Convulsive Therapy)を行うことがあります。この治療は、脳に電気刺激を加えることによって人工的にてんかん発作を起こし、精神症状の改善を図る治療です。必要時にはm-ECT実施可能な病院を紹介させていただきます。