睡眠障害:健やかな眠りを取り戻すために
皆さまは、毎日ぐっすり眠れていますか?
睡眠は私たちの心身の健康に欠かせないものです。
しかし、眠りたくても眠れない、眠っても疲れが取れないという方も少なくありません。
そんな睡眠の悩みの代表的なものが「不眠症」です。
不眠症とは
不眠症は、睡眠障害の一つです。
眠りたいのに眠れない、睡眠の質が良くないといった状態が続き、その結果として日中の生活に支障をきたすようになった状態を指します。
具体的には、以下のような症状が現れることがあります。
- 日中の強い眠気
- 体のだるさや倦怠感
- やる気や集中力の低下
- めまいや頭の重さ
- イライラや気分の落ち込み
これらの症状によって日常生活や仕事、学業などに影響が出始めると、不眠症と診断される可能性があります。
不眠症の原因
不眠症の原因は複雑で、一つとは限りません。
よくある原因として、以下のようなものが挙げられます。
- ストレスや不安、うつなどの心理的要因
- 慢性的な痛みや呼吸器疾患などの身体的要因
- 薬の副作用(特に向精神薬や血圧の薬など)
- カフェイン、アルコール、ニコチンなどの嗜好品の過剰摂取
- 騒音、光、温度、湿度などの環境要因
- 不規則な生活リズムやシフトワーク
- 加齢に伴う睡眠リズムの変化
不眠症の種類
不眠症は主に4つのタイプに分類されます。
1. 入眠障害
寝床に入ってから30分以上経っても眠れない状態です。不安やストレスが原因となることが多く、不眠症の中で最も一般的なタイプです。
2. 中途覚醒
いったん眠りについても、夜中に何度も目が覚めてしまう状態です。再び眠りにつくのに時間がかかることもあります。
3. 早朝覚醒
予定の起床時刻よりも2時間以上早く目覚めてしまい、その後眠れない状態が続きます。高齢者に多く見られます。
4. 熟眠障害
十分な時間睡眠をとっているにもかかわらず、眠りが浅く感じられ、朝まで熟睡した感覚が得られないタイプです。
検査と診断
不眠症の診断は、まず詳しい問診から始まります。
睡眠の状況、生活習慣、ストレス要因などについて丁寧にお聞きします。
必要に応じて以下のような検査を行うこともあります。
- 血液検査(甲状腺機能や貧血の有無など)
- 睡眠日誌の記録
- アクチグラフ(腕時計型の活動量計)による睡眠-覚醒リズムの評価
- 睡眠ポリグラフ検査(睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合)
治療について
不眠症の治療は、原因や症状に応じて総合的なアプローチを行います。
1. 睡眠衛生指導と生活習慣の改善
- 規則正しい睡眠スケジュールの確立
- 朝の光浴と適度な運動
- 寝室環境の整備(温度、湿度、光、音など)
- 就寝前のリラックス法の実践
- カフェインやアルコールの摂取制限
2. 認知行動療法
不眠に関する考え方や行動パターンを改善する心理療法です。睡眠に対する不安や誤った信念を修正し、健康的な睡眠習慣を身につけていきます。
3. 薬物療法
生活改善だけでは効果が不十分な場合、睡眠薬を使用することがあります。睡眠薬には以下のような種類があります
- ベンゾジアゼピン系睡眠薬:効果は高いですが、依存性や翌日の持ち越し効果に注意が必要です。
- 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬:ベンゾジアゼピン系に比べて副作用が少ないとされています。
- メラトニン受容体作動薬:体内時計の調整に役立ちます。
- オレキシン受容体拮抗薬:依存性が低く、翌日への影響も少ないとされる新しいタイプの睡眠薬です。
また、抗うつ薬(トラゾドンなど)や漢方薬(酸棗仁湯、抑肝散など)を用いることもあります。
そのため、特別な事情がない限り、当院ではこれらの薬を処方いたしません。
これらをやめたいけどどうしたらいいかわからない、とお悩みの方々は、ぜひご相談ください。
4. その他の治療法(当院では実施しておりません)
- 光療法:体内時計の調整に効果があります。
- アロマセラピー:リラックス効果を促進します。
- マインドフルネス瞑想:ストレス軽減と睡眠の質の向上に役立つことがあります。
重要なのは、一人一人に合った方法を見つけることです。私たちは、あなたが健やかな眠りを取り戻し、充実した日々を過ごせるようサポートいたします。
睡眠に関する悩みは、体や心の健康に深く関わる重要な問題です。
一人で抱え込まずに、ぜひ専門家にご相談ください。
あなたに合った最適な睡眠のあり方を、一緒に見つけていきましょう。
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